2025年09月30日
幼稚園生の頃、デパートに隣接するたい焼き屋で親によく買ってもらったことを思い出し、帰国ついでに千葉まで足を伸ばして食べに行った。コロナ禍もあって翌年に閉店してしまった。小学生の頃に家族で通ったそば屋を思い出し、兵庫に寄って食べてみたのだが、ここも今はない。あと一軒、もう一度訪れておきたいお好み焼き屋が広島の呉市にあり、今はおばあちゃんが一人で頑張って切り盛りされている。どうか末永く続けてほしい。
【広島グルメ】地元で大人気呉焼きの店
2025年09月29日
先日「ロケットの父」ロバート・ゴダードについて触れたが、エンジニア出身の偉人といえば、やはりトーマス・エジソンとヘンリー・フォードを忘れるわけにいかない。エジソンがガソリン自動車を開発するフォードを激励したという話はよく知られているが、2人が毎年、自らを「Vagabonds(放浪者)」と呼び、車でキャンプ旅行に出かけるほど親交を深めていたというのは最近知った。悪路を走る車の耐久性テストとしても大いに役立ったとか。
The Vagabonds: The Story of Henry Ford and Thomas Edison's Ten-Year Road Trip | Jeff Guinn
2025年09月28日
かつて「Turbosynth」という音響合成/処理機能を備えた初期のソフトサンプラーがあった。久々にこのソフトで遊んでいる。独特の歪みやフィルターは、Nine Inch Nailsのデビュー作の音作りにも一役買ったと聞く。当時は「今まで聴いたことのない音」に触れた時のワクワクが音楽を聴く大きな動機の一つだったが、今や音楽は「ユーティリティ」の一つであり、そうした意外性や冒険、リスクは求められていない気がする。だからこそ、創造の冒険心を忘れたくない。
This Old DAW : Exploring Turbosynth
2025年09月27日
OE『Letting Go (Suchness 6)』の配信後に情報を公開しますが、11月上旬にDark Modelの新作をリリースします。今年前半に制作のペースを落として他の方面からのインプットに取り組んでいたことの反動か、また猛烈にアウトプットしたくなってきました。人生は何が起こるか分からないので、少しでも思いついたことは躊躇せず形に残しておきたい。”Finishing is better than starting.”(終えることは始めることに勝る)は旧約聖書の言葉。
小友 聡『コヘレトの言葉を読もう』
2025年09月26日
自分は創作人間なので、過去の偉人と呼ばれる人々の中でも、ビジネスで成功した人物よりエンジニアやクリエイター出身の人の方により強く関心が湧く。「ロケットの父」ロバート・ゴダードが考案・発明した特許は200以上あると言われるが、その多くは彼の死後に与えられた。名誉や金、権力がすべての偉業の動機ではないことを忘れないためにも、彼の存在とこの言葉を時折思い出したい。「昨日の夢は、今日の希望であり、明日の現実である。」
『ロバート・ゴダード: ミスター・ロケット・サイエンス』(ルーカスフィルム
2025年09月25日
人間の脳の生物学的性能は、ホモ・サピエンスが登場した数十万年前からほとんど変わっていない。寿命は別として、基礎体力に関してはむしろ後退しているとすら言われる。脳を含めたハードウェアとしての人間はほぼ同じなのに、脳が直面する環境や文明は劇的に変化・進化してきた。言ってみれば超旧式のパソコンで、OSやアプリだけを次々と入れ替えているようなものだから、五感や健康の維持といったハードウェアのケアにいっそう気を配りたい。
ダニエル・ヒリス『思考する機械 コンピュータ』
2025年09月24日
“pigeonhole” は文字通り「鳩小屋」という意味だが、他動詞として「(鳩小屋の巣箱に入れるように人を)分類する、レッテルを貼る、決めつける」という意味で使われることがある。人は何かを分類したり決めつけたりすると、モヤモヤが解消できた気がして安心し、優越感を覚える。決めつけが難しい相手には不安や恐怖、時には敵意を抱く。「決めつける」というのは最も安易な自己欺瞞だが、そのことへの罪の意識を欠く人こそが人の上に立ちたがる傾向がある。
ジャック・ニコルソン『全ての俳優はレッテルを貼られたらおしまい』Being pigeonholed is the death of all actors.
2025年09月23日
「先日アメリカのコメディアン、スティーブン・コルベアの人気番組が終了すると聞き、ジミー・キメル(日本ではキンメルと表記される)は大丈夫だろうかと心配していた。ところが遂に彼の番組も放送停止になってしまったらしい」と、先週末ここに書こうとしていたところ、何とキメルの番組が復活するという。大統領から見ると「キンメルは才能がゼロだ」とのことだが、彼の番組ほど長く愛され、ウィットに富んだ笑いを届けてくれるものは今のアメリカには少ない。
Jimmy Kimmel Live『ママが言った一番ひどい言葉は何?』
2025年09月21日
Perplexityは情報の鮮度が高い点が良いところだが、大手ニュースサイトやアカデミックなデータベースからはことごとくブロックされているため、情報源の豊かさや信憑性には大きな限界がある。この記事にある「Garbage In, Garbage Out(インプットがゴミならアウトプットもゴミ)」というのは、確かに的を射ている。なので、僕はPerplexityを(情報検索ではなくて)Pythonなどプログラミングの補佐として使うことが多いのだが、他のAIより優れていて助かる時もある。
2025年09月20日
家の水回りの調子が悪かったので、業者の方に見てもらった。水回りといえば3年前の感謝祭の夜、階上からの水漏れで洗面所や廊下が水浸しになったことがある。事情を聞くと、上の住人はジャグジーを設置していて、そこから漏れたのだろうとのこと。さては奴ら、感謝祭でシャンパン飲み飲み、泡まみれではしゃいだに違いない(笑)。その後何日も、見たこともない位大きな扇風機が数台運ばれてきて、けたたましい唸りを上げながら家中を乾かしたのだった。
The Ultimate Hot Tub Party Checklist for Summer
2025年09月19日
漁業のことは全くの素人だけれど、なぜか昔から心を引かれる。以前、瀬戸内海の小さな島で、老夫婦が漁業権を取得し、自給自足や小さな商いのために漁をしている様子をテレビで見た記憶がある。実際には個人で漁業権を得るのは容易ではないらしいけれど、“晴耕雨読”にならって『晴れたら漁へ、雨なら音楽を作る』―そんな“晴漁雨音”の暮らしには、いまも強く憧れる。
漁業権の申請方法や個人でも取得できるのか知りたい
2025年09月18日
ある高名な芸術家がかつてこう語った。「日本人は表現を、社会や時代への疑問・抵抗ではなく『私小説』にしてしまう。だから日本のアートは世界で評価されにくいのだ」と。海外で暮らしていると、盗難や襲撃など外的な脅威や社会不安から身を守ることが日常になる。一方、日常が守られ、飢えも暴動もなく、夜も安心して出歩ける社会では、「何も起きないこと」そのものが空虚感や閉塞感を生み、それが妄想的に積み上がって創作のテーマになるという逆説的な構図がある。
土居 健郎 -「甘え」の構造
2025年09月17日
効果音(サウンドエフェクト)は巷に出回っているので、わざわざ自分で作らなくても間に合うといえば間に合う。しかし、クセのある音や特徴的な音を作りたい場合は、シンセで波形を一から合成したり、自分で録音したオリジナル音源を加工して作るしかない。これは作曲とは異なる、いわば別の創作魂や忍耐力が試される世界。効果音といえば、ここ十年で最も定番化したのは「BRAAM(ブラーム)」だろう。次の時代を形作るのは、はたしてどんな音なのだろうか。
How to create professional CINEMATIC BRAAMS from scratch
2025年09月16日
2年ぶりに、各種がん検査を含めた健康診断を受けた。詳しい結果はこれからだが、現時点では異常なし。毎日2時間体を動かし、毎朝山盛りの野菜を食べ、超規則正しい生活を送っているので、これ以上健康的にしろと助言されても思いつかない(笑)。今も健在な父は「俺は生命線が2本あるから、まだ大丈夫だ」と冗談めかして言う。長寿も素晴らしいが、最後に心の底から笑える人生は、さらに素晴らしい。
ダニエル・リーバーマン『運動は長寿の特効薬か?』
2025年09月15日
創作手法にあえて制約や縛りを設けることで、よりクリエイティブなものが生まれることもある。これは作り手なら誰もが経験しているだろう。ただ、そうして生まれた作品を受け手がどう感じるか以前に、このアプローチ自体が目的化・教義化してしまったり、作り手としてむしろ満足できないクオリティに陥ってしまうなら意味がない。そんなことを、かつて話題になった映画製作運動『ドグマ95』を思い出しながら考えた。昨日の「度胸比べ」も厄介だが、「ガマン比べ」も大変だ。
2025年09月14日
AI研究者・認知科学者として知られるゲイリー・マーカスは、AIの進化の行方について数年前から強い警鐘を鳴らしてきた。炎上好きな彼ゆえ、その発言はある程度割り引いて受け止めるのが賢明だが、日本のIT界には「あえて現状を疑い、問題を突きつける」論客が少ない。いずれにしても、AIビジネスが「誰のテストステロン(男性ホルモン)が一番か」とばかりに、まるでカジノの度胸比べのようになっている現状こそ、まさにバブル(=行き過ぎ)だとも言える。
ゲイリー・マーカス『AIバブルのピーク』
2025年09月13日
Mac OSが今で言うクラシック環境だった頃、とても個性的で、しかも重宝し、しかも殆ど誰も知らない(笑)音声合成ソフトがあった。数年に一度はそのソフトを再び使いたくなるのだが、Basilisk IIというエミュレーターとMac OS 7.5.3のディスク(!)などを用意して下準備をしなければならないため、毎回思い立っては即座に挫折する。OE『Physical Fiction』や『New Classics Vol.2』に収録されている曲でよく用いた。
OE 『New Classics, Vol. 2』
2025年09月12日
先日、池上彰さんが「嫌いな言葉は『真実』」と話しているのを見て、すぐに思い出したのは、トランプが設立したSNS「トゥルース・ソーシャル」だった。「真実と虚偽は顔が似ている。我々は欺瞞を拒む根性がないばかりか、むしろ自ら進んで罠に飛び込んでいく。虚しいことに、巻き込まれるのが好きなのだ。」モンテーニュがこう説いたのは、16世紀半ば。
『モンテーニュ よく生き、よく死ぬために』(講談社学術文庫)
2025年09月11日
OE『Letting Go』に続く作品が完成。今はそのさらに次の作品に向けて、リサーチやアイデア集めに没頭中。思えば音楽のキャリアを始めてから5年くらいまでは、自分の作品の中で知られるようになった数曲だけで、音楽性やスタイルを頭ごなしに決めつけられたりジャッジされることに猛烈な抵抗を感じていた。あれから四半世紀近く経ち、制作した曲は1,000を超え、様々な国の人たちが自分の様々な音楽を楽しんでくれている。当時の葛藤も、今となっては笑い話。
他人を決め付ける人が増えるほど、世の中は停滞する
2025年09月10日
AIには、手軽に大量消費されるジャンクフードのような仕事や創作物を量産する危険性がある。ただし、「〇〇とハサミは使いよう」とも言うように、倫理観を持った熟練者が技を駆使し、創意工夫をすれば、AIを活用してアウトプットに新たな「価値」を吹き込むことは十分に可能だろう。人間の熟練や手間、そしてモラルを早々に手放し、強引な「ジャンク化」を進めて繁栄と余暇を謳歌してきたレイジーな人々こそが、AIの存在をひたすら恐れ、煽り、過剰反応している。
「AIのネットフリックス?」Fable Studio CEO Edward Saatchi
2025年09月09日
2007年のブログでは、当時出版されたばかりの『ジョルジオ・アルマーニ 帝王の美学』を読んでいることを書いていた。そこには「栄華もリスクも、ここまで全面的に一人の男が背負い、立ち続けている現役ブランドは意外と少ない」と記している。その後、彼やブランドの歩みをつぶさに追い続けていたわけではないが、最期まで彼の覚悟や姿勢は変わらなかっただろう。世界に素晴らしいクリエイションをもたらしてくれたことに、心から感謝の思いを捧げたい。
『ジョルジオ アルマーニ 帝王の美学』
2025年09月08日
アドビのソフトはグラフィック系から映像系まで幅広く使っているが、最近はAuditionという音声編集ソフトをよく使う。特に重宝しているのが「テンプレート」と「バッチ処理」機能だ。例えば、アルバムの全曲を3分でフェイドアウトさせたい場合や、音量を3dB上げたい場合、1曲で行った編集工程をテンプレートとして記録し、それを全曲にまとめて適用できる。Adobe Creative Cloudを使っている人はぜひ試してみてほしい。
Adobe Auditionで簡単バッチ処理! | ういやまラボ
2025年09月07日
南アフリカ出身のピアニスト、ダラー・ブランドがイスラム教に改宗し、名前をアブドゥーラ・イブラヒムに変えていたことを知ったのは、実はわりと最近のことだ。大学に入り一人暮らしを始めた頃、彼のアルバム『African Piano』を寝る前によく聴いていた。当時は「夜聴くのにちょうどいい作品だ」と思っていたのだが、今あらためて聴いてみると、じわじわと盛り上げて爆発するエモーショナルな演奏が印象的で、よくこれを聴きながらうとうと出来たものだとつい笑ってしまう。
Abdullah Ibrahim - Bra Joe From Kilimanjaro
2025年09月06日
「運」という言葉には常に違和感がある。サイコロを1回振って6が出れば「運が良い」と言われ、1万回振れば(どの目もほぼ1/6ずつだから)「確率通り」と片づけられる。だが、「1万回試行すれば、運によるばらつきや不確定要素を消せる=ゼロではなくなる」と考えることはできないだろうか。本当に大事なのは運を語ることではなく、どれだけ理にかなった試行を重ねられるかだと思う。僕はその1万回試行する過程にこそ人生の醍醐味があると信じている。
2025年09月05日
10/3(金)にOEの新作『Letting Go』をリリースします。Suchnessシリーズ第6弾となる本作は、前作『Moment of Now』で披露した、禅的な世界観を持つアンビエント要素とスローなビートを融合したダウンテンポ楽曲を中心に構成されています。今月後半には、いくつかの楽曲の試聴版も公開予定ですので、ぜひご期待ください。
OE『Letting Go (Suchness 6
』2025年10月3日リリース
2025年09月04日
「Higher consciousness(高次の意識)」。リック・ルービン『The Creative Act』のオーディオブックを聴いていて、そんな言葉が浮かぶ。彼が80年代以降のロック、ヒップホップ、テクノに刻んだ功績は計り知れない。彼について不思議なのは、あれほど喧騒に満ちてダーティーでクレイジーな音楽と米音楽業界のど真ん中に長年いながら、どうしてこんなにも「心穏やか」でいられるのか、という点。彼の佇まいや語る言葉が、禅僧ティク・ナット・ハンのそれと変わらないのだ。
The Creative Act: A Way of Being by Rick Rubin · Audiobook
2025年09月03日
ダイソン氏の英国批判はいつも鋭い。「英国では、できるだけ努力せずに金で金を稼ぐ仕事が良しとされた。当然ながら、手仕事によるものづくりはもちろん、工場で機械を使うものづくりも極めて悪い仕事とされた。だが、マネー以外に何も生み出せない仕事ほど、情けなくて汚いものがあるだろうか?」正にその通りだと思うが、彼の憂いとは裏腹に、世界中が猛烈な勢いで「マネー以外何も生み出さない世界」へと突き進んでいる。この流れには屈しない。
The O'Jays - For the Love of Money
2025年09月02日
あるポッドキャストのインタビューで、ジェームス・ダイソン氏(イギリス人)が「かつての”セトレ”のサスペンションはとても優れていたよ」と語っていた。しかし、「セトレ」というメーカー名を色々調べても出てこないため、僕の知らない自動車の部品メーカーなのだろうと解釈していた。だが昨日、それが日本でもかつて人気だったフランス車「シトロエン」のことだと分かった。アメリカにはディーラーすらないので、誰かが英語でこのブランド名を口にするのを聞いたことがなかったのだ。
How to Pronounce "Citroën"
2025年09月01日
僕が高校生の頃、数学の参考書といえば数研出版の『チャート式』か雑誌『大学への数学』、それにZ会や予備校が出している本くらいだった。最近になってマセマ出版社の数学テキストを知ったのだが、インディペンデントな出版社ならではのクセある雰囲気が気に入って何冊か読んだ。大学で数学を選ばなかった僕にとっては、受験参考書風の語り口が取っつきやすくてありがたい。陰ながら応援してます。
数学問題チャレンジチャンネル⑱ 大学数学編