2025年06月30日
日本では「無宗教の人が多い」とよく言われるが、正確には特定の一神教を信仰する人が少ないということだと思う。学校教育で知識や教養は得られても、人生の意味や死の捉え方、困難への向き合い方といった本質的な問題について学ぶ機会は非常に少ない。無宗教であるということは、そうした問いに対する答えを自分自身で探し、見つけ出さなくてはならないということ。それが結果として、日本社会特有の生きづらさや面倒臭さを生んでいるようにも感じる。
2025年06月29日
以前、「すべてのものは他の何かに似ている」というアナロジー(類推)を使って音のデバイスを発明したウディ・ノリスについて書いたことがある。知識だけで説明するより、「〇〇は××のようなもの」と身近な例に置きかえて伝えた方が、すっと理解できるし、共感も得やすい。若い頃広告の仕事に関わっていたのも、そんな「類推の力」に惹かれたから。でも不思議なのは、難しい学問やお役所的な仕事に関わる人ほど、類推の力を使わず、わかりにくいまま伝えようとすることだ。
2025年06月28日
Pythonを使って、機械学習やディープラーニングのスクリプトを実行して遊んでいる。少し複雑だったり、大きなデータを扱ったりすると、驚くほど計算時間がかかる。その間何もせずボーッとしていると、あっという間に一日が終わってしまう。そこで、待ち時間の有効な使い方について周囲に相談してみたところ、「Pythonのアプリで問題を解いてみたら?」という提案があった。機械に学習させながら自分も学習するなんて、なんて最高にストイックなアイデア!
2025年06月27日
数学者を描いた映画は、なぜこんなにも多いのだろう? とふと思う。自分もこれまでに結構な数の「数学映画」を観てきたけれど、フィクションの世界では「数学者=繊細で、常人には理解しがたい、ミステリアスで突飛な側面がある」という設定がデフォルトになっているように思う。ミュージシャンにも突飛さはあるかもしれないが、繊細さよりもエゴや欲望が前面に出る(笑)。だから数学映画のような”しみじみ感動話”の音楽家版は難しそうだ。
2025年06月26日
アメリカの労働生産性が著しく低下しているという。株式や債券、投信に加え、仮想通貨市場を含めると、アメリカの金融経済は実体経済の10倍以上に膨れ上がっているとも言われる。このような異変が起きている中で、商品やサービスを通じて「価値を提供して稼ぐ」従来型の労働をばかばかしく感じる人が増えるのは、当然の帰結とも言える。Uberの運転手が「ビットコインで稼いだから、大手量販店を退社して気ままに生きることにしたよ」と話していたのが印象的。
2025年06月25日
20年ほど前にこの世を去ったアーティスト、荒木高子氏の「聖書」プロジェクトをご存じだろうか。火災や天災により本当に焼き尽くされた聖書かと思わせる、圧倒的な荒廃の美がそこにはある。さらに、これがすべて陶(セラミック)でできているという事実にも驚かされる。彼女が「聖書(宗教書)を焼く」という行為にどういう意味を託したのか、知るすべはない。ただ、我々鑑賞者はこの作品に時代の影を映し、これからも深く考え続けることになるだろう。
2025年06月24日
「残りの人生であと何回この作品を聴けるチャンスがあるだろう?」と考えるほど心に響く作品がある。それも数百枚とか数千曲(笑)。これから40年ほど元気に過ごせたとしても、聴ける音楽には限りがある。たとえ1日1曲でも、「この音楽に出会えて良かった」と感じる瞬間があれば、大抵のことは乗り越えていける。そして、もし自分の曲でそんな風に感じてくれる人が世界のどこかにいるとしたら、それはこの上ない喜び。
2025年06月23日
ChatAIはこう答えた。「それは“トリレンマ”ですね。」トリ?何やそれ?と一瞬「鳥貴族」の黄色い看板がよぎったが、「ジレンマの三つ版」みたいなものかと解釈した。つまり、金融や政治では「三つの重要目標を同時に満たすのは難しい」という問題があるらしい。ただ日銀のやってきたことは、一部にだけ良い顔をして、日本が育んできた価値と誇りを損ねたようにも思う。こんなクオリティが高くて激安、かつ平和な鳥貴族、いや「ディスカウント遊園地」みたいな国は他にない。
2025年06月22日
「勉強法」に関する良い本がないかと時折調べてみるのだが、自分の求める内容に出会えた試しがない。勉強法というと、大半が「効率よく、早く、ラクに」習得する方法や、試験に受かるためのコツばかり。つまり「どうゴールに辿り着くか」が主な関心事になっている。僕が知りたいのは、「そもそも何をゴールとするのか」を考えることだったり、勉強すればするほどゴールの次元が上がっていくような学びについてなんだけど、それは「勉強法」とは言わないのかも知れない。
2025年06月21日
コム・デ・ギャルソンの2025-26年秋冬コレクションのテーマは「Smaller is Stronger」だった。今もなお反体制的な精神を創作に込める川久保さんらしいコンセプトだと感じる。2025年の現在、国同士も人同士も争いが絶えないが、いったい誰と戦うべきなのか、そもそも戦いに意味があるのか、「強さ」とは何か。そうした本質的な問いを深く考える機会や、それを促す空気自体が、著しく減っているように思う。「考えないこと」が人間を弱くする。
2025年06月20日
国や企業、個人の債務を一括りにするのは無理があるとは思うが、借金が嫌いな自分は、日米の膨大な債務を「大丈夫だ」という意見には、どうしても疑問を抱かざるを得ない。この記事では、映画『マネー・ショート』のモデルの一人であるスティーブ・アイズマンの「ドルと米国債は最強」といった若干古臭いコメントを紹介している。ガザ侵攻に小躍りした彼は昨日もテレビでイランへの攻撃を「最高の儲けのチャンスだ」とぬかしていたが、世の中、ゲスの極みには際限がないね。
2025年06月19日
僕の使っているストリーミング・サービスのアカウントには、数百のプレイリストがあって、ほぼ毎晩のエクササイズ中にその中から選んで音楽を聴いている。運動しながら新しい曲を追加することもよくある。よく聴く「MPB/Latin」というプレイリストに入っている曲のひとつが、今回紹介するこの曲。オルケストラ・アフロシンフォニカについては詳しくないけれど、バイーア(ブラジル)とアフリカのリズム&ハーモニーが融合したこの大所帯サウンドを、好きにならないはずがない。
2025年06月18日
数年前「シーフードや野菜をスパイスで和えて、ビニール手袋をつけて手づかみで食べる米南部のケイジャン料理は、食材とスパイスさえ揃えば意外と簡単に作れる」と書いたことがある。ただし、実際にはその食材やスパイスを揃えるのが手間で、日本ではそもそもロブスターを扱うスーパー自体が少ないのも現実。そんな中、東京と大阪に本場の味に近いケイジャン料理を楽しめる店があると知った。「手づかみシーフード」で検索してみてください。
2025年06月17日
かつてパット・メセニーがケニーGを痛烈に批判した「事件」があったらしい。エンタメ系のゴシップに興味がない僕は、その話も最近まで全然知らなかったし、知っても「へぇ、そうなんだ」くらいの感想しかない。ただ、才能や実力に関係なく、表現者が他の表現者を一方的に「裁く」のは感心しない。結局は、相手のオーディエンスを見下しているか、その人の境遇に嫉妬しているだけのように見えてしまうからだ。とことん“Mind your business(自分のことを心配しろ)” で行きたい。
2025年06月16日
音楽で生きている自分がこう言うのは変かもしれないが、もし感情のスイッチである扁桃体や自律神経がなければ、もっと気楽に生きられるのでは…と突拍子もないことを考えることがある。だから、感情を交えずに発想や仕事を助けてくれるAIには感謝しているし、政治家なんて全部AIでいいんじゃないかと思うことすらある。かつて日本では「感情を持つAI・ロボット」が話題になったけど、そんな技術が普及したら逆にますます面倒で生きづらい国になるだろう。
2025年06月15日
近所にトルコ人が多く住む地域があって、そこのスーパーの品ぞろえがユニークだった。ピスタチオ入りの緑の焼き菓子「バクラヴァ」や、すごく伸びるアイス「ドンドゥルマ」など、大手チェーンでは見ない食べ物を売っていて発見の連続。あの不思議な食感のアイスがたまに恋しくなるのだが、最近はなんと、家庭でそれに似た食感のヨーグルトを楽しめる。どうやら「クレモリス菌」が鍵らしい。
2025年06月14日
以前のウェブでは、自分のサイトに有益な情報を載せれば、検索結果で上位に表示されるのが普通だった。ところが最近は、GoogleなどがAI検索を導入し、苦労して書いた情報が要約に使われて終わるだけ、という問題が起きている。「役に立つ情報ほど吸い取られる」悲劇が始まったというのだ。僕自身はむしろGoogle検索をあまり使わなくなり、使う時もAIによる要約機能はオフにしている。
2025年06月13日
「歴史に”たられば”はない」というのはその通りだ。でも、未来について空想したり、“たられば”を考えるのは悪いことじゃないと思う。過去の事ですら、事実は変えられなくても、その解釈は幾らでも変えられる。歴史は、エゴの強い「現実を都合よく捻じ曲げる人たち」によって作られてきた面があって、彼等の頭の中は自分勝手な“たられば(ファンタジー)”で一杯だ。僕ら普通の人だけが現実を直視してしかめっ面ばかりしているのは割に合わない。もっと空想しよう。
2025年06月12日
Gary Bartzの曲で”Music is my sanctuary(音楽は私の聖域)”という素晴らしいタイトルの曲がある。我々はインターネットが普及したことで様々な音楽にアクセスしやすくなった一方で、音楽という「耳で感じる文化」へのありがたみを徐々に置き去りにしている気がする。人間は一日30ギガバイトの情報を浴びるとも聞くが、情報量(バイト)に換算すべきかどうかはさておき、人間が聴覚情報を通して受ける情動は視覚情報のそれに比べると今や微々たるものだろう。
2025年06月11日
『Cosmic Funk Expo Vol.1』が発売されてまもなく3週間、そろそろ続編のリリースの準備に取り掛かります。既に曲は仕上がっているので、残っている作業は配信の手続きとか登録くらい。今年はアルバムの制作はあと1枚位に抑えて、新しい世界に見聞を広げることに引き続き時間を割きたいと思います。ところでRolandのエアロフォンを使ったMAE.SUMの演奏は、なかなかコズミック・ファンクしてて心地良い。
2025年06月10日
Analysis Paralysis(分析まひ)という言葉がある。”Too much knowledge leads to paralysis by analysis.”(知識が多すぎると、分析しすぎて行動できなくなる
というのは、勉強や読書が好きな人が陥りがちな「弱点」。残念なのは、知識を軽視する傲慢で野蛮な輩達がその弱点を知っていて、自分達が利するためにつけ込むことがあること。知性は他人に利用されるためではなく、まずは自分の可能性と行動を拡げるために使うことを優先したい。
2025年06月09日
日本語検定の模擬テストをオンラインで発見したので試しに1級に挑戦したら、「やんぬるかな」の正しい使い方を選べという問題が。やん?ぬる?子供の頃に『走れメロス』を読んだ時以来聞いたことない…。こんな古い表現で日本語の力を測るというのはどうなのかなと思いつつ、ChatGPTに「この言葉は今でも使うんですか?」と聞いたら、「まず使いません。現代風に言えば「詰んだ」「無理ゲー」でしょう」という答えが。どうなのよ、「にほごん」君。
2025年06月08日
よほどのことがない限り、譜面を書いて作曲をすることはないし、ジャズやクラシックの特定の曲を研究する時以外譜面をじっくり読む機会はない。だから音符と記号の詰まった楽譜を見ると未だに圧迫感を覚える。微分積分や確率統計の本を読んでいてワッと圧倒される感覚も同じ。どちらも時間をかけてじっくり追っていけば理解はできるけど、愉快じゃない。譜面なしでも作れて楽しめる音楽があるように、難解な記号がなくても理解できる数学を誰か作って。
2025年06月07日
NBAプレイヤーのレブロン・ジェームズが過去の試合の流れを、驚くほど事細かに再現しながら説明している動画を見たことがあるだろうか(僕はなぜか柳沢慎吾のひとり甲子園ネタと被る、笑)。神経科学者のチャラン・ランガナス氏によると、レブロンは自分の専門領域、つまりバスケに自分の記憶システムを「最適化」させているのだという。普段の生活でも、必要な情報にフォーカスし、余計な情報や感情に脳の主導権を「乗っ取られない」ように習慣づけておきたい。
2025年06月06日
少し前まではバラバラに見えていた自分の興味の点が、ある日突然輪のようにつながって見えるようになることがある。点と点がつながる感じは、外から訪れた偶然や閃きというよりも、実は長い年月をかけて自分がたぐり寄せ、頭の中で仕込んであったさまざまな事柄がモゾモゾ&じわじわと動きだして手をつなぎ合う、もっと経験に根差した「内なるもの」。一見無駄や失敗に見えることは、その仕込みの通過点に過ぎない。
2025年06月05日
他人の敷いたレールから距離を置く、という話を書いたが、人生全て自己流で生きられるはずもなく、先人や他人から学んだ方が良い事は山ほどある。僕は特定のメンターや「師匠」を作るのは興味がないけど、現実世界から架空の人物まで、数えきれないほどの「ロールモデル」にお世話になった。自分にとって「部分的に」ロールモデルとなる人やアクション、スキル、仕事ぶりを集めて研究し、それらの「断片」を組み合わせたり掛け合わせているうちに人生はオリジナルなものになる。
2025年06月04日
何十年か振りに「合格体験記」というものの存在を思い出した。僕が受験勉強をする機会があったのは中学と大学入試の時だが、大昔の中学入試のことも意外と覚えている。当時僕が住んでいた県は私立中学への進学が熱心なエリアで、実績のある有名塾も近くにあったが、人気投票的な学校選びや親同士の見栄の張り合いが苦手な僕は自習を選び、地元の学校は受験しなかった。「距離を置いて、しっくり来る環境を選ぶ」というのはこの頃から。
2025年06月03日
「AIで生成した音楽をApple MusicやSpotifyなどのストリーミングサービスに流通し、数千のボットアカウントを使って数億回の再生し、不正にロイヤリティを得ていた」的な、詐欺行為に関するニュースは頻繁に耳にする。この手の話題では、AIで生成した音楽をどう扱うかの問題と再生ボットの問題を混同している適当な記事が多いが、この記事は後者の問題に絞って書かれている。ただ、テックの人間が「音楽業界全体の信頼」と大風呂敷を広げるのは寒々しい。
Apple Musicが語る、音楽業界で増加する不正再生や詐欺行為の現状と対策とは?
2025年06月02日
作家カレル・チャペックは『園芸家の一年』の中で、「(人々はメーデーのことを)労働の祭典と呼ぶが、「成果の祭典」とは呼ばない。人間は、労働自体の意味や主義よりも、むしろ自分が成し遂げたことに着目し、誇りを持つべきだ」と説いた。農家が収穫を、園芸家が草木の開花を祝うように、時に自分の仕事の成果を振り返り鼓舞することは大事だと思う。金銭的な価値や労使関係はさておき、仕事(と人生)は自分の庭園を育て、実らせることによく似ている。
2025年06月01日
アメリカの英語は映画の世界だけでなく実際の会話もカジュアルで下品になりがち(彼らはそれを「より自然体に聞こえる」と言う)。僕はその風潮が苦手なのだが、相手が何を言っているか分からないと困るので、一応免疫はつけている。先日『千と千尋の神隠し』の英語版を見ていて”What a dope!(ドジねえ)”というセリフが”What a dork!(キメぇよ)”に聞こえてしまった自分に残念だった(笑、ただどちらも上品ではない)。耳を浄化したい。