2025年10月31日
2022年に出版されたある本を読んでいたところ、「『成長できない日本』と言われるようになって久しい。日本経済研究センターの予測では、日本の一人当たり名目GDPは27年に韓国、28年に台湾を下回るという。」と書かれていた。そこで調べてみると、昨年の時点で既にどちらの国も下回っていた。一人当たりのドル建てGDPが常に最良の指標とは限らないが、例えば2000年を見れば3位だった。政府や日銀が経済をどんなにカジノ化しても、データは嘘をつかない。
2025年10月30日
パルス音(脈打つ音)は、音と音の間隔が一定でありながら、音量や音程に違いをつけてシーケンスを作ったり、ループさせたりすることでグルーヴを生み出していく。さまざまな音程(周波数)の音がいくつかのレイヤーを構成し、重なり合ってグルーヴとストーリーを紡いでいく楽曲、いわば「パルス音の活断層」のような音楽を作るのはとても楽しい。そんな「パルス音縛り」でドラマティックな楽曲を集めたプレイリストをSpotifyで作ってみたので、ぜひお楽しみください。
Electro Pulse & Tension - playlist by Model Electronic Records | Spotify
2025年10月29日
「10月末までにCookie Consent(サイト訪問者にCookie使用の同意を得ること)を実装しないと、Clarityのアクセスデータ分析機能が制限されます」という通知がマイクロソフトから届いていた。ClarityにしてもGoogleアナリティクスにしても、僕が訪問者の行動を分析するためというより、手荒な情報収集を続ける彼らのために僕らが情報を「収集してあげている」感が強かった。というわけで、これらのエコシステムの呪縛から徐々に卒業すべくスクリプトを削除中。
2025年10月28日
先日、日米の充実感やストレスの質の違いについて書いたけれど、インドについては?中国は?ブラジルは?と聞かれると、まったく答えられない。世界の3分の2以上の人たちが何を話しているのかも聞き取れない。音楽はまだしも、彼らの間でどんなスポーツが熱いのかも把握していない。というわけで、インドでは国民的スポーツであるカバディの試合を立て続けに見て、この地球には自分が経験したことのない熱狂が、まだ山ほどあることを思い知らされている。
2025年10月27日
「たかが…されど…」という言い方には違和感がある。「たかが」で物事を深刻にとらえすぎず、執着しないよう自分に言い聞かせておきながら、「されど」で未練や割り切れなさを表す。この曖昧さや心の揺らぎ、余韻は、ある意味とても詩的で情緒的なのかもしれないけれど、結局誰も幸せにしない気がする(笑)。暴論かもしれないけれど、全部「たかが」で生きた方がストレスが少なく、本当に大切な時間と人を大切にして、充実した人生を送れるのではと思うのです。
2025年10月26日
すべての場所がそうとは限らないが、アメリカでは普通に暮らしていても警戒心が強くなる。とはいえ不安だらけでお先真っ暗というわけではなく、仕事でも遊びでも「動けば動いただけ報われる」充実感を得られることが多い。日本は治安や医療で質の高い平和を実現しているが、「運命は自分の手で変えられる」と思える風土があるとは言いがたい。ストレスの質が異なる複数の世界を知ることは、結果的にストレスの量を相殺し、自分の可能性を広げることにつながる。
2025年10月25日
久々にレヴィ・ストロースの業績に触れる機会があり、「ブリコラージュ」という概念を思い出した。彼に指摘されるまでもなく、日本人はこの「ありあわせの道具や素材を使ってものを作る」ことがとても得意なので、この言葉に親近感を持つ人も多いはず。30年前に自分が曲作りを始めたのも、まさにこの手法。ただ、「ブリコラージュ」の相対する「エンジニアリング」も非常に大事なアプローチで、この2つの技術をたゆまず磨いてこそ創作が前進するのだと思っている。
2025年10月24日
香川県高松市にある栗林公園は、風光明媚な庭園として有名だけれど、今では栗の林は姿を消してしまった。その代わり、栗まんじゅうを扱う和菓子店が点在している。久しぶりに食べた栗まんじゅうの上品な味にも感動したが、それ以上に、その色合いと形が「ちいかわ」の「栗まんじゅう先輩」に似ていて思わず笑った(というか逆だけれど)。栗まんじゅう先輩がパンになったという記事を目にして、また栗林公園を訪れたくなったという、たわいのない話。ハーッ…
2025年10月23日
「ジオエンジニアリング(気候工学、地球工学)」という途方もない発想を知ったのは、元マイクロソフトのCTOであり、料理研究家で写真家という多才な科学者ネイサン・ミアボルドのインタビューを見た時だった。「成層圏に微粒子を散布して太陽光を宇宙に反射する」など、SF小説の設定としても笑われかねない壮大で危険な構想に、本気で取り組む人たちがいる。日本ではあまり注目されないトピックだが、今後も動向を追っていきたい。
2025年10月22日
若い頃は、「もっとお金があれば幸せなのに」なんて思いもしない。なのに、人は世間の垢にまみれていくうちに、いつの間にか、金銭的なものや物質的な豊かさと人生の価値を結びつけて考えるようになる。高い家賃や生活費を賄い、体裁のために走り続けるラットレースで人生を終えるのは、やはり勿体ない。自分のロールモデルは、「同時代を生きる他人」ではなく、他人や世間と比較せずとも楽しかった、「若気の至り」真っ盛りの頃の自分自身にこそあるんじゃないか。
2025年10月21日
国内外のスポーツ番組で使用された、僕の楽曲を集めたプレイリストを作りました。海外ではMLB、NFL、WWE、UFC(野球、アメフト、格闘技)など、国内ではオリ・パラ、プロ野球、サッカー、バレーボール、フィギュア、世界陸上、世界柔道、マラソンなどの中継やスポーツバラエティ番組まで、幅広く使っていただいています。通算ベスト3は『Tougher Than Steel』『Close to Infinity』『Fate』辺り。お楽しみください!
2025年10月20日
Amazon Musicのジャズの新曲を紹介するプレイリストでは、僕もまだ知らないエッジの効いたアーティストにしばしば出会い、触発される。それに加えて毎日複数のジャズ・ラジオ局をチェックしているので、制作や自分の曲を聴いている時以外の大半の時間はジャズを聴いていることになる。ただ、ジャズ、しかもインストゥルメンタルを聴く人は、今や随分少数派なんだろうなと、子供の頃にテレビで見た日本のジャズフェスティバルの賑わいから感じた次第。
2025年10月19日
先日の「無信論」ではないけれど、僕は医者でも弁護士でもカウンセラーでも、「断言する専門家」の言葉は信用しないことにしている。特に人の生死に関わる医療の分野で断言するのは危険な行為だが、扇動的で極端な主張ほどよく売れるのが世の常。専門家がどれほど自信満々に言い放っても、当然ながら、僕らが失った命やお金、幸せの責任は負ってくれない。自分で学んで、選択肢を増やし、決断する力をつけることが何よりも大事。
2025年10月18日
経営やマーケティングの専門家らしき人たちは「戦略」という言葉を好む。「戦術」なんて些末なものより戦略が大事だと説く。机上で理屈を並べ、高みから講釈を垂れるのが職業の人はそれで体裁が保てるかもしれないが、現実の世界では戦術を生み出し実行しない限り何も進まない。戦術から戦略を学ぶことはあっても、戦略から何かを学ぶことはない。「準備せよ、狙え、撃て」ではなく、「準備せよ、撃て、狙え」。まず動かなければ狙いは定まらない。
2025年10月17日
「無神論」とは違って、僕は「信じる能力」や「信じることそのもの」に対して懐疑的なところがあるのだけど、「無信論」なんて言葉はもちろん存在しない。この考えに近いものは何かとAIに聞いたら、「懐疑主義、科学主義、実存主義、ヒューマニズム、もしくはポストモダンです」という答えが。「信じることに依存しない生き方こそが真の自由に繋がる」という考え方を、皮肉や嫌味、ニヒリズムに逃げないで前向きに伝えた思想家として、フロムは貴重かも知れない。
2025年10月16日
「ベートーヴェンはナポレオンを民衆の擁護者と称賛して『英雄』を作曲し、その後、権力に媚びる姿勢に失望して反感を抱いた」というエピソードがある。真相はさておき、音楽が宮廷貴族(クライアント)主催のパーティーミュージックだったモーツァルトの時代と比べると、ベートーヴェンの作曲動機は明らかにアーティスト的であり、音楽(家)の存在理由が18~19世紀にかけて大きく変化したことがよく分かる。オーディエンスにはその違いがあまり意識されないかも知れないけれど。
2025年10月15日
ただいまtatsuyaoe.comのテコ入れ作業中。情報の更新はしているけど、たまにPHPやWordPressのキャッチアップ作業が必要になる。自分が運営しているウェブサイトの中では最も古株のこのサイト、2002年に立ち上げた当初はDreamweaverでコツコツ更新していた。Findingsのページはその頃から存在していて、途中で長文形式になったけど、今は初期のフォーマットに戻った感じ。2002年はこんな曲を作ってました。
2025年10月14日
中国の水墨画家である牧谿の実物の作品は、まだ『漁村夕照図』(根津美術館)しか見たことがない。一番見たいのは大徳寺の『観音猿鶴図』だが、寺社が蔵する作品は、ふらりと訪れて眺められる類のものではないので、しばらくは写真で忍ぶほかない。長谷川等伯をはじめ、牧谿の影響を受けた日本の絵師は非常に多いのに、本国・中国では正当な評価を得られなかったという。そうしたことを意に介さぬような気配もまた、惹かれるところではある。
2025年10月13日
アルバムOE『Letting Go』の収録曲を、メドレー形式で10分ほどにまとめた動画を作りました。まずはこの動画で試聴いただき、その後は各サービスでアルバム全体を楽んでいただけると嬉しいです。Model Electronic関連の動画を最初にアップすることにしているサービスVimeoは、地味ながらも「ラウドネスノーマライゼーション(音量調整)」のような余計なガバナンスを行わず、広告収益にも執着しない、今どき珍しいクリエイター想いの風土があります。
2025年10月12日
故デイヴィッド・リンチの著書『Catching the Big Fish』のオーディオブックを聴いた。彼が熱心な(超越)瞑想の実践者であることは全く知らなかった。僕は毎日、頭を空っぽ(無)にする時間を作るようにしているが、続いてせいぜい5分ほど。瞑想よりも呼吸法の方に興味があるけれど、どちらも誰かから「メソッド」を教わろうと思ったことはない。そもそも瞑想や禅思想には、その根底に「将来の実益や成果(”Big Fish”)を求めず、今を生きる」という姿勢があると思うのです。
2025年10月11日
11月7日(金)にDark Model『Stripped Mixes』をリリースします。前作『Alternative Mixes』の続編的な位置づけとも言えますが、今作はシンフォニーとエレクトロニックな要素で構成されたDark Model本来の重厚で「エピック」なアレンジをさらに削ぎ落とし、リズムやオーケストラアレンジの核となるモチーフに焦点を当てたミックスを収録しているところが特徴です。引き算の美学でDark Modelの音楽を再構築しました。
2025年10月10日
“Inverse Paranoid(インヴァース・パラノイド)”という言葉は、英語圏でも特に広く知られているわけではないが、僕は常々面白い概念だと思っている。単なるポジティブシンキングや、スティーブ・ジョブス、トランプ、カニエなどに見られる「RDF(現実の捻じ曲げ)」とも異なり、「良いことも悪いことも含め、自分に起こることすべてが、自分を鍛え、成長させる機会だ」と捉える考え方を指す。「不幸や不運は自己成長のチャンス」と解釈して毎日生きられたら、最強。
2025年10月09日
犬の嗅覚が人間より優れていることは知っていたが、アフリカゾウの嗅覚は犬の比ではないらしい。遠く離れた水の匂いまで識別できるというが、だからといってありとあらゆる匂いを拾って困るわけではなく、その識別能力は生存やコミュニケーションのために適切に使われているようだ。ところで、耳には音楽、目には映画と、それぞれの感覚と結びついた時間芸術があるけれど、「匂いの時間芸術」があるとすれば何だろう?
2025年10月08日
ある会社から「自動生成AIを盛り込んだので、あなたのサブスクを“Pro”プランに移行して値上げしました」と知らせが来た。自動生成は必要ないのでプランを戻そうとしたら、ウェブでは変更できない仕組みに。仕方なくチャットで連絡すると、ダウングレードしたいと言っているのに、逆にサービスを追加しないかと食い下がってくる。この「解約あるある in USA」な手法に「ダーク・パターン」なんて立派な呼び名がついていることをつい最近知った、善良な民ダーク・モデルなのでした(笑)。
2025年10月07日
WordPressもアーキテクチャとしては、すっかり古巣の部類になった。ヘッドレスCMSとか、Next.jsとかカッコ良く聞こえるけど、正直エンジニアの人が大型受注を増やすための方便のように感じてしまう部分がある。とはいえ、WordPressやPHPのバージョンアップにはある程度キャッチアップしないと色々問題があるので、久々にPHPと格闘。AIの力を借りつつ、専門家が見積もれば数十万円はかかりそうなテコ入れ工事をコンプリートできてひと安心。
2025年10月06日
「死ぬのはこわくない」というセリフをよく耳にする。確かに、死をどう捉えるか─つまり「理屈」によっては、死への恐怖を抑えられる可能性もあるだろう。ただ、死ぬのが怖いか怖くないかはその人の自由だが、家族やその人を大切に思う人たちは、その人に「死なれるのはこわいし、つらい」。この“喪失への恐怖”は、死ぬ本人にはコントロールできない。自分を思う人のためにも命を大切にし、一生懸命生きねばならない。そんな当たり前のことに、改めて気づかされる機会が増えた。
2025年10月05日
今日は業務連絡です。Model Electronic Recordsは、レコード(原盤)製作者としてインディペンデント・レーベル協議会(ILCJ)に入会します。ILCJは、権利者である会員から委任を受け、文化庁指定の管理団体である日本レコード協会(RIAJ)と連携しながら、交渉や分配を行っています。レーベルを設立して約20年、原盤製作者としての権利を活用しきれないもどかしさを感じてきましたが、ようやく時代が動き、一歩前に進めたことを嬉しく思います。
2025年10月04日
今年に入ってから、スタジオジブリの作品を見る機会が増えた。これまで極端に宮崎作品に疎かった僕は、今さらながら彼の創作人としての「底力」に感服している。『出発点』のようなインタビュー集やドキュメンタリー、『吾輩はガイジンである。』といったバックストーリーを通して人物像には触れていたものの、今思えば、先に作品そのものをもっと味わっておくべきだった。音楽については、人や予備知識よりも音で良し悪しを判断すべきだと信じて疑わないのにね。
2025年10月03日
本日OE『Letting Go (Suchness 6)』が発売されました。2020年に始動したSuchnessプロジェクトもすでに6作目。前作からエレクトロニックビートを導入することで、従来の「禅と環境音楽」的な音世界を一歩前進させる新たな可能性を感じています。Bandcampのページも公開したので、ぜひ試聴してみて下さい。
2025年10月02日
海外の起業家、特にハードウェア・エンジニア出身の人々はこぞって「アキオ・モリタ」をロールモデルとして挙げる。今の日本人よりも彼の功績について詳しいのではないかと思うほど。数十年前に繰り返し読んだ『Made In Japan』を、いま再び手に取っている。ソニー成長期の卓越した商品開発力やマーケティング力は言うまでもないが、この本で最も印象深いのは、エンジニアであり実業家であり、そして日本人としての彼の「プライド」、つまり「負けてたまるか」な意地だ。
2025年10月01日
ドイツの音楽著作権管理団体GEMAがOpenAIを訴え、法廷闘争が始まった。OpenAIに限らずテック業界の連中は、他人の創作物について「フェアユース」という言葉を軽々しく使いすぎるところがあって、まさに「おまいう」だ。生成AIは画期的な面もあるけれど、周囲に群がる輩の倫理観の欠如と著作権に対する鈍感さのために、早晩自滅するかも知れない。ちなみに『なぜOpenAIは崩壊するか』という記事を書いたのはジェフリー・ファンクという人。名前がいい(笑)。
『なぜOpenAIは崩壊するか: LLMは安上がりではない』





































