マイクロブログ・アーカイブズ 2023年12月
人間はいつか死ぬ存在だからこそ、何かをやってみようと思い、自分の人生を出来るだけ意味のあるものしようと取り組む。ナチスの強制収容所で体験した極限状態において彼を支えたものは「生きる意味」だと、ヴィクトール・フランクルは説く。僕は古典的な精神医学や心理学からは距離を置いているけど、実体験に根差した彼の考察は説得力がある。
人間はいつか死ぬ存在だからこそ、何かをやってみようと思い、自分の人生を出来るだけ意味のあるものしようと取り組む。ナチスの強制収容所で体験した極限状態において彼を支えたものは「生きる意味」だと、ヴィクトール・フランクルは説く。僕は古典的な精神医学や心理学からは距離を置いているけど、実体験に根差した彼の考察は説得力がある。
人は誰でも自分の中に「アーティスト」と「裁判官(ジャッジ)」を抱えているという。二役とも、一日の仕事量の上限はほぼ決まっている。自分と関係のない事柄に首を突っ込んだり、むやみに事を複雑にして判断の数を増やすと、人が本来持っているアーティスト資源=創造性や発想力、飛躍力が劇的にしぼんでいく。
紙の束を渡されて、「制限時間内に出来るだけ沢山の紙を、教室の向こう側に飛ばしなさい」と言われたら?紙飛行機を一つ一つ作って飛ばそうとする人は、紙をくしゃくしゃに丸めた玉を放り投げる人に惨敗する。後者の解決法に眉をひそめる大人もいるだろうが、現実世界で瀕死の状況を切り抜けたり社会に変革を起こすのは後者のやり方。答えは一つでないことを教わる機会はあまりに少ない。
日本でタクシーの運転手が自分の好きな音楽をかけっ放しにすることはまず考えられないが、海外では運転手の「選曲」の個性を味わうのも乗車の楽しみの一つ。これまでの経験では、パリのタクシーはファンク、ディスコ、ハウス、NYではR&Bからインド、アラブ音楽(=故郷の音楽)まで、西海岸ではロック、スムース・ジャズ、ハワイではトラップにハワイアン等々。それにしても、みんな音量がデカイ。
数年前に高齢で亡くなった美術家の本と作品に触れた。日本美術に疎いからか、僕が東京にいた頃にその方の名前を聞いたことはなく、作品も見た事がなかった。世の中には陽の目を十分に見ていない、眠れる傑作・傑人が沢山いることを痛感する。日が当たらないものに対して世間というのは随分と残酷なのだけれど、そんな事とは無関係に、作り手の魂は作品の中で永遠に輝き続ける。
ラテン音楽やディスコ、ファンクを聴いて気分が塞ぐという人に会った事がない。好きな音楽ジャンルは沢山あるが、僕がこれらの音楽が特に好きなのは、ウンチクや評論、体裁が入り込む余地がなく、体と心が「楽しい!」と素直に反応するから。逆に「これは(格好)良い音楽です」と頭に言い聞かせてから楽しむのが好きな人もいるだろうけど、そういう情報で判断が揺らぐタイプはこの手の音楽にはあまり接近しない。
ライオンの寿命は囚われの身で25年、野生だと12年~16年らしい。檻の中では食物も医療、仕事ですらも保障されるし、第一、外敵に殺される危険がないので、当然長寿になる。動物愛護や種の存続の点では様々な意見があるだろうし、ライオンに生きがいや充実感、退屈という概念があるのかは分からない。ただ少なくとも人間は、健康や安全の確保以上に「生きる価値」を追い求めずにはいられない生き物。
1998年冬、パリのラ・ヴィレットでGlobal Teknoというフェスティバルがあった。デビューして間もない頃の初海外ライブで、東京から機材と変圧器を抱えて、今は無きヴァージンエアに駆け込んだのを覚えている。エイフェックスやらダフトパンクやらの出演者に交じって、エレクトロニックミュージックの新しいうねりの渦中に自分も居合わせることが出来たことを感慨深く思うと同時に、これからも絶えず変化し、音を創り続けることを誓う、25年後の初夏。
キプリングの有名な詩「If」に「If you can meet with Triumph and Disaster, and treat those two impostors just the same」という一節がある。大勝利と大惨事というのは、究極的にはコインの表と裏の様なもの。 若い頃はピンと来なかっただろうが、歳と経験を重ねるとこれはよく分かる。人生何が起こってもそんなに落ち込む必要もないし、そんなに舞い上がる必要もない。これはまさに「塞翁が馬」の意味するところ。
音楽で生きている自分がこう言うのは変かもしれないが、もし感情のスイッチである扁桃体や自律神経がなければ、もっと気楽に生きられるのでは…と突拍子もないことを考えることがある。だから、感情を交えずに発想や仕事を助けてくれるAIには感謝しているし、政治家なんて全部AIでいいんじゃないかと思うことすらある。かつて日本では「感情を持つAI・ロボット」が話題になったけど、そんな技術が普及したら逆にますます面倒で生きづらい国になるだろう。
近所にトルコ人が多く住む地域があって、そこのスーパーの品ぞろえがユニークだった。ピスタチオ入りの緑の焼き菓子「バクラヴァ」や、すごく伸びるアイス「ドンドゥルマ」など、大手チェーンでは見ない食べ物を売っていて発見の連続。あの不思議な食感のアイスがたまに恋しくなるのだが、最近はなんと、家庭でそれに似た食感のヨーグルトを楽しめる。どうやら「クレモリス菌」が鍵らしい。
以前のウェブでは、自分のサイトに有益な情報を載せれば、検索結果で上位に表示されるのが普通だった。ところが最近は、GoogleなどがAI検索を導入し、苦労して書いた情報が要約に使われて終わるだけ、という問題が起きている。「役に立つ情報ほど吸い取られる」悲劇が始まったというのだ。僕自身はむしろGoogle検索をあまり使わなくなり、使う時もAIによる要約機能はオフにしている。